ハワイ。州都はオワフ島のワイキキ市で、アメリカ合衆国50州の中で最後に加盟した州とウィキペディアに書いてある。1778年にイギリス人の海洋探検家、キャプテン・クックが初めて現地民と接触した白人でその後、1795年にカメハメハ大王が建国したのをきっかけにハワイ王国が誕生した。一年中、常夏のイメージがあるハワイだけれどきちんと雨季もある。と云っても日本の梅雨みたいにざあざあと長雨が続くことはない。
雨降りの次の日はからりと晴れ上がり、訪れた方々はご存知のようにあの甘い香りのする偏西風がそよそよと吹いてとても過ごしやすい。地元の人びとは底抜けに明るく早朝、ジョギングをしていると向かいの家のポーチで新聞を立ち読みしているおじさんがおもむろに「アロハ!」って声をかけてくる。そして、云うまでもないことだがここで何日も過ごしていると、皆んな気分がゆるゆるになって些細なことなどどうでも良くなってくる。
羽田空港から夜便で(七時間半くらいで)ホノルル空港に到着した僕は、その後ホテルでチェックインを済まして早速、ワイキキ・ビーチに向かった。ホテルから市街の中心地は歩いて十分くらいだったから途中、ABCマートに立ち寄ってTシャツやサンダルを購入して
_現地で必要な物を調達するのがルールです_「モアナ・サーフライダー」のバーで念願のピナ・コラーダを飲んだ。ちょうど市街の上空に虹がかかって僕を出迎えてくれた。
ハワイに来たら先ず、ピナ・コラーダを飲むのが僕の儀式になっているのだけれど、近年どこの店に行っても美味しいピナ・コラーダを出してくれるところがなくてがっかりしています。その点、久しぶりに飲みましたが「モアナ」のバー(後ほど店名は紹介します)はフローズンが細かくて、パイナップルやサクランボも上等で、お酒の利き具合もまずまずのバランスです。これを飲む度に、「やっとこさハワイに来たよな。」って思います。
翌朝は六時に起きて支度を整えて送迎のバスに乗車したあと、ワイキキから北上すること四十分くらいの場所にある「クアロア・ランチ」ツアーを愉しみました。僕が組んだのは乗馬とプライベート・ビーチでのアクティビティです。ハワイの鉄則その二:体力が残っている滞在前半に活動的に動く……です。これはもう常識中の常識なのですが、ハワイはただビーチでゴロゴロ寝て休む場所ではないんですね。がっつり動いていく島なのです。
だから日本を発つ前に僕はこの「クアロア・ランチ」ツアーほか、いくつか予約を入れておきました。何もそこまで念を押さなくてもと思われがちですが、現地に行って夕飯を食べる際に行列に何時間も並ぶなんて行為はナンセンスなのです。もちろん、それが醍醐味って思うなら止めませんが、間違っても「チーズケーキ・ファクトリー」の店先でブザーが鳴る機会を持って無意味な時間を潰したくはないですね僕は(いや、実に本当に)。
乗馬やカヤックでアクティビティを愉しむ中、新しいシューズを手に入れてジョギングもしていました。泊まっているホテルからカラカウア通りを抜けてカピオラニ公園を半時計回りに走りながら、ダイヤモンドヘッドの袂まで走ったらその足で頂上まで登ってしまうということをやっていました。頂上からの眺めもそこそこにすぐに下山してまた元来た道を休憩も挟まずに一気に戻るという……地元の人間(ひと)も驚いていたけれどね^^;
ちなみに朝食はもちろん、パンケーキ食べていました。「エッグスンシングス」はハワイと東京で食べてきたので今回は「ビルズ」のパンケーキを愉しみました。僕はどちらかというと、「ビルズ」のパンケーキが気に入りました。生地がフワフワで味付けも「エッグスン〜」より繊細な感じでした(でもケーキ三枚は朝からやはり重たいかなと……)。店内の女性客たちはペロリと平らげていた様子ですが、甘いのはやはり別腹なんですかね?
昔からハワイに出雲大社の分社があるのは知っていたのだけれど、まさか自分が出雲市の人間になるとは夢にも思っていなかったから(いまでも半信半疑な気分でいます……)、ハワイに行った際にはお参りをきちんとしておこうと思って行きましたよ、その分社に。見た目は「なるほどね、分社だけあってこれはコンパクトだな。」と思ったのが第一印象でしたが、カラフルなレイを付けた狛犬を見てユーモアを感じて親近感が湧きました。
お参りの帰りにアラモアナ・ショッピングセンターの辺りをトロリーで通過したのですが出版界の某風雲児が秘かに投資をしている噂の再開発現場もちらっと確認することが出来ました。それにしても、出版社の社長ってどうして不動産に手を出すんですかね? 僕の勤めていた出版社の社長も不動産に傾倒していたけれど、きっとあれですかね。銀行からお金を借りる際に出版業をやっていると受けが良いんですかね(噂話で訊いた……)?
「ウルフギャング・ステーキハウス」は昔からハワイにあったけれど、日本に店舗が上陸したり『肉食』ブームの牽引もあってちょっとした有名店みたいな感じになっていたので「どれここは一つ、熟成肉ってやつを試してみようじゃないか。」って挑んでみたのですが_何でも挑戦したくなるのが僕のネイチャーです_評判が高いだけあってサーロインやフィレの肉質がとても上品でした(食べやすい程度に肉が柔らかくなっていました)。
この日の夜は調子に乗って赤ワインも飲んでいたので、ワイキキのギャラリーにも立ち寄って(いま一押しの)写真家:ピーター・リックの作品を特別な個室に入って時間をかけてゆっくり観させてもらいました。「あなたのその話に出てくる古民家にはきっと、こういうインパクトのある写真が良いんじゃないかしら?」_ まさかワイキキに来て作品を鑑賞するような時間を持てるとは思わなかったけれど、とてもシックで良い写真でした。
ハワイに来たら必ず試してもらいたいのが、新鮮なフルーツや野菜を使ったオーダー・メイド・ジュースです。カラカウア通りはカピオラニ公園の看板が立っている場所に、「タッカー&ベヴィー」という店があります。ここはフルーツと野菜を自分で選んでその場でジュースを作ってくれます。僕は走ったあとだったから、アヒ・スモーク・ラップ(ツナとほうれん草のピタサンド的なやつ)と一緒にパイナップル・ジュースを飲みました。
ハワイで働いている人間(ひと)、とくに女性については皆、気持ち良く声をかけてきてくれる。「アロハ、あなた走ったあとなの。それで、何か作った方が良いかしら?」とか「あなたの(ナイキ)シューズ、それイカすじゃない本当よ。」とか、いろいろ切り口があってこちらも気分が乗っているからつい、「キミの鼻ピアスもチャーミングだよ、渋谷にはまず居ないタイプだからさ。」って褒め返した……というのは真っ赤な嘘です。
ハワイ通の人間なら誰もが知っていると思うのですが、ワイキキビーチに隣接したカピオラニ公園内には動物園があります。「ホノルル動物園」は意外にも歴史が古くて開業は1876年まで遡ります。僕も以前までは、「わざわざハワイまで来て動物園もないでしょう。こんなに綺麗なビーチが目の前に広がっているのだから。」って思っていたのですがなかなかどうして結構、色々な種類の動物たちの姿を目にすることが出来て愉しめます。
僕は昔から動物園が好きで暇があるとよく訪れる……というのは真っ赤な嘘ですが、でも海外旅行に出かけた時に “ZOO” って文字を見かけると、「まあ、ここはひとつゾウやキリンの姿でも眺めに行くかな。」って思うことはあります。ヒョウやライオンみたいな花形動物_という呼び名も変だけれど_よりも僕はシマウマやペンギンみたいな白黒の模様を持った動物に惹かれます(人間だと身体にほくろが……この話題は止めておこう)。
「ホノルル動物園」で日を浴びたせいか頭がクラクラしてきたので、これはいけないなと思い歩いて数分の場所にあるホテル、「モアナ・サーフライダー(・ウェスティン・リゾート&スパというのが正式な名称なんだけれど長いですよね)」に逃げ込んで、水分補給がてら「ホノルルコーヒーカンパニー」でアイスコーヒーを飲みながら、スケッチブックを開いて絵を描いたりして過ごしました(日記の代わりに街の風景とかを描いていた)。
ちなみに、僕はこの「モアナ・サーフライダー」に何度か泊まったことがあるんだけれど、ご覧の通り『品』のあるホテルでクラッシックと云えばクラッシックなんだけれど、他のホテルにはないエレガントな雰囲気が気に入っています。このホテルのビーチ側には美味しいカクテルを出すバーがあって、その名も「ザ・ビーチ・バー」と云います。僕はここの「ピナ・コラーダ」の大ファンでワイキキに来たら初日の夜に必ず立ち寄ります。
僕にとってハワイのとくにワイキキの街が好きな理由の一つが、「慈愛に溢れている街」という点なんです。資本が高度に投下された街だから、シィステマティックと云えばシステマティックなのですが。働いている人びとはその点はよく解った上で嬉々としている。信号待ちしている時も縁石に “ALOHA” と記されていて「なるほどなあ。」って思います(日本の場合だと「ポイ捨てダメ!」みたいなセンスのない標語が溢れていますよね)。
滞在最後の夜に「ロイヤル・ハワイアン・ホテル(「ピンク・パレス」の愛称で親しまれている)」の「マイタイ・バー」で本物のマイタイ_ここのアリ・マイタイは35ドルと少々お値段が高いのですが、正直云ってぐわんぐわんに酔っぱらえます_を飲みながら、「真面目も休み休み云わないとな。」って思いながら。ワイキキ・ビーチに浮かんだ月と遠くの方でその月明かりを浴びて陰影をつけたダイヤモンドヘッドを眺めていました。
翌朝、ピンク・パレスにまた立ち寄って出発前に身体を解しておこうと「アバサ・スパ」でロミロミの施術を受けました。昨夜の「マイタイ・バー」同様、ここのスパも外せない店の一つで、日本を発つ前から予約を入れておきました(高度に資本が投下された街ではまともなサーヴィスを受けようと思ったら、それなりにスマートさを求められます。僕はワイキキの街のそういう「シィステマティックな部分」がとても気に入っています)。
「日焼けで肌が乾燥しているでしょうから、保湿系のクリームを使っていきましょう。」僕を担当してくれた日本人の女性はそう云うと、スルスルと紐を解くようにマッサージを始めてあっという間に僕の身体のネジを緩めていった。その間、僕はココナッツの香りを愉しみ、「魂が浄化されるというのは、こういうことなんだろうな。」って思いながら眠りに落ちた。スパを出たあと、入口に咲いた花が僕に『愛』のメッセージを伝えていた。
「数年ぶりに訪れたワイキキの街は、快適に過ごすための新しいサーヴィスと新しい店を携えて、またまたヴァージョン・アップしていた。」というのが、数日間を過ごした僕の正直な感想です。ちょうど大型連休前に遊びに来たということもあって、日本人の観光客も目立って居なかったのも気持ち良く過ごせた理由だと思います(滞在中、唯一多かったのはハネムーナーでした。とくに女性は開放的な気分に浸っているように見えました)。
空港までの送迎にリムジンが登場した時はさすがに、「ちょっとサプライズが過ぎるな。」って驚いたけれど(それでも表情は崩さずクールに努めた。何と云ってもここは、ハワイだし「高度に資本が投下された街」だからいちいち驚いていたらキリがない)。「まあ、こういうこともあるよね。」ってくらいな感じで流れる車窓を横目にワイキキをあとにしました(このあと、空港ロビーも人が居なくて驚くことになるのですが…)。
「あなたにとって “アナザースカイ” はどこですか?」と尋ねられたら、「ハワイです。」ってやはり答えると思うんですよ僕。イタリアのフィレンツェも候補に挙ってくるけれど(もう十年以上訪れていない)、でも手放しに「自分の居場所だな。」って思えるのは、ハワイのとくにワイキキの街だと思う。カピオラニ公園をゴールに運河沿いのコースを朝走っていると「そうそう、ジョギングってこういうことだよな。」って素直に感じます。
走って、飲んで、泳いで、食べて、とき時で眠って、吞んで、(そしてとき時で口説いて)ということをやっていれば、「人生は幸福なのではないか?」と思わせる不思議な磁力を持った場所がハワイです。甘い香りに誘われるように人びとはそこにやって来ては、少しずつ緊張を解きほぐしてゆき、最後の方はゆるゆると慈愛に溢れた気分に浸っています。やはり僕はこう思うのです、「真面目も休み休み云わないとな。」って。マハロ^^
[了]
《後日附記》
ハワイに向かう直前に熊本をはじめ九州地方で大地震が起きた。前兆は東京の家に住んでいた頃からあって、地震の知識に乏しい素人の僕でも「そろそろまた大きな地震が起きるかもしれないな。」と二月の頃に思っていた矢先の出来事だった。熊本には少なからず、僕の知人が住んでいたのですぐに安否の確認を行いましたが、幸い大事になる人はおらずほっとしました(でもその後の確認で家に住めなくなった知人が何人かいました)。
ハワイ行きの航空機の中で正直、「このタイミングで外国に出かけても大丈夫かな。」と思ったのですが、現地に到着してワイキキで数日間を過ごしているうちに、僕はこう考え直すことにした。「物理的に距離を置いて、日本という国やそこで暮らしている人びとのことを考える良い機会かもな。」と_ (実際、)ネットの世界では皆んな一様に大地震に関連した出来事に触れてばかりで、ハワイにいる僕から見ると少し異様な光景だった。
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数年前の東日本大地震の時もそうだったけれど、日本人のストレス耐性というのは『面』で受け止めようとする良い部分があって(こういうのは外国ではあまりないんですね)。でも裏を返せば、皆んなで引き受けようとしてそのストレス耐性に合わない人間は結構、しんどい時期を過ごしたのは事実だったと思います。今回、熊本をはじめ九州地方の大地震では僕は(個人的に)冷静な目で見ていこうと思い直しました。
カピオラニ公園を黙々と走っていると、頭の中でいろいろな思念が浮かんでは消えてゆきます。僕は絵描きだから日頃から自我(エゴ)と向き合うことが多いのですが、絵を描いたり・文章を書いたりすること、この二つは走ることと似ているような気がします。僕は絵を描きながら(文章を書きながら)身体を作っているわけです。うどんのようにコシのあるタッチや文体を作ることが出来れば、人びとの心を惹きつける作品を生み出せます。
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人びとの心を惹きつける作品を生み出せれば、そこに《物語》が生まれます。《物語》にコミットメントすることが出来れば、人びとの心は救われたり・癒されたりします。僕は政治家でも活動家でもないから、支援や協力できる範囲が限られているけれど。傷ついた人びとの心を癒すことは出来ます。絵を描いたり・文章を書くことで彼らを別の場所へと連れてゆくことが出来ます。
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