2016年6月16日木曜日

出雲移住計画 ♯04 _ シン・撰組のふたり組、アンチ・ヒーローの哀愁、『竜退治』に出かける理由

出雲に移住してきてかれこれ二ヶ月が経ちましたが、こちらは僕がかつていた東京より西に900km移動しているので夏の到来が早いです。ちょっと電波を拾いに海岸沿いを歩いているとすぐに日焼けしちゃいます、まあ健康的と云えば健康的なんですが日焼けした自分が慣れなくて妙な気分で過ごしています。


古民家再生計画の進行は遅々として進まず、「これが出雲時間か……。」と気を揉んでいるのですが。大社に住んでいる家主(の奥さん)が毎回、趣味でやっている菜園で収穫した旬の野菜を僕にくれたりするので文句も言い難く。大人しく場面が展開するのを温泉に浸かりながら待っている日々が続いています。


















そんな矢先、海岸沿いでドーナツを食べながら鼻歌を唄っていたら、「歌はいいですよねえ。」って謎の青年が突然現れて一緒にドーナツを食べることになりました(彼はJAの職員で先日、車の保険のことでお世話になった)。謎の青年のことをここでは仮に、「渚カヲルくん」と名付けることにする_

















その次の週、松江から地元の大学生が古民家再生の件で応援に駆けつけてくれた。背の高い男の子(土方歳三と名付ける)と大きい瞳が印象的な女の子(沖田総司)のふたり組だ。彼らは古都の治安を護る新撰組よろしく、手鎌や刈り鋏を手に古民家に付いてくる果樹園の伸びた雑草を一掃してくれた。


翌日は海岸のゴミ拾いも手伝ってくれたふたり組は、一仕事終えるとざぶんと海に飛び込んで気持ち良さそうに泳ぎ始めた。僕は彼らの一陣の風のような爽やかさに何か眩しいものを見たような気がした(このあと実際に、ホットフラッシュのような目眩に襲われることになった)。若さっていうのはそれだけで素晴らしいのだ。

























村での食生活はどうですかと訊ねられることがあるのだけれど、東京にいる頃とそんなに変わりはなくてとき時、パスタを茹でたりしています。森林浴をよくしているのでフェトンチッド(木が発散する成分で抗菌作用を持っている)を身体にたくさん蓄えています。なので風邪もまったくひいていません。


退屈な時はもちろんありますが、そんな時は辻井伸行の弾くショパン(『別れの曲』)を聴きながら、ドライブを愉しむことにしています。人間と戯れるよりも最近は動物たちと遊んでいることが多くなってきました(近所で飼われている犬たちと一緒に夕方になるとムツゴロウさんみたいに戯れ合っている)。
















娯楽が圧倒的に不足している場所なので、先日は映画館に出かけて行って『デッドプール』を観て来ました。その影響があってということもないんだけれど、描き下ろし作品でちょっとアメコミ風の絵を描いたりし始めました。アンチ・ヒーローの哀愁って僕、昔から好きなんです。バットマンとかもそういう類いかな。


村人から誘いを受けて先日は、海ほたる(発光性のプランクトン)を船に乗って見に行ったり、川辺で鳴いている河鹿蛙の声を聴くイベントに参加しました。こういうのは田舎に暮らしていて良かったなあって思える瞬間です。河鹿蛙の鳴き声って皆さん知っていますか? ほろほろほろって口笛を吹くみたいな声なんです。

























ある日の朝、神々しい朝焼けを眺めたあと集中してそのアメコミ作品を仕上げることにする。仕上がったあと地元の画材屋さんに出かけて行って、額装のお願いをする(創業80年の老舗です)。「PANKICHIさんの作品はお洒落ですね。」ってお店の若夫人は仰って、「そうですかね、自分では気がつかないけれど。」って僕も答えた。


京都に出かける前にゴミ出しをしておこうと、ゴミ袋に名前を書いて玄関先に置いておく。ここ出雲ではゴミ出しは自分の名前を明記するのがルールで決まっている。東京の人間がそれを訊いたらきっと驚くと思うけれど、個人情報保護とかそういう概念は田舎ではまだまだ希薄なのです。見られて困るゴミはないけれど。






















あ


























制作で身体が疲れていたから温泉に入ったのは良いんだけれど、ろくに寝ていなかったから身体が温かくなって睡魔が襲ってきた。人前でゴロンと寝転がるタイプではないのだけれど、辛抱出来ずにリラックスしちゃいました。明日はいよいよ古民家再生の件で、施工業者が村にやって来ることになっていたけれど。しばし休憩。


翌朝は見事に晴れて蛇も日光浴しているのを見つつ(咬まれても死なないやつと、咬まれたら死んじゃうやつと両方)、極限の状況に追いつめられていたので無理矢理笑顔作って高台にある古民家に向かう。途中、漁港で干していた若布が宇宙人の侵略の風景に見えて叫んじゃうほど疲労感を抱えながら(本当に叫んだ「ぎゃっ!」って)。






















高台の古民家で施工業者と打ち合わせをしたあと、大社近くにある蕎麦屋で天麩羅を揚げてもらってひと息つく。書きもの仕事も溜まっていたのでやはり近所の珈琲店で、パソコンを持ち込んでタイプをする午後。「何だかちょっと疲れているかもな。」たしかに最近色々な活動で身体を動かし過ぎて疲れていた。


古民家再生の見取り図を熱心に描いていたら、店員の女の娘が「PANKICHIさん、ごゆっくりしていってくださいね。」と優しく声をかけてくれた。「ありがとう、でも明日から京都に行かなくちゃいけないから。」とクールに答えた。そう、僕は明日から京都探訪に出かけるのだ。秋に企画している個展の下準備に出かけに。
















僕がいま住んでいる仮住まいの家がある裏山は竜山と云うんだって、先日ドーナツを一緒に食べた渚カヲルくんが教えてくれたんだけれど。『竜退治』の話をそこでハッと思い出す。ユング派の心理療法家:河合隼雄先生(故)は著書の中でこう説明している。「『竜退治』の話は西欧で人気のある物語なんですが_」_


_「竜を退治するというのは、要するに西欧で云うところの『自己の確立』なんですな。ここで云う竜というのは自分の行いの足を引っ張ってくる女性(主には母親とか近くにいる女性)のことを指すのですが……」_ 僕は思うところあって田舎に来たのだけれど、まさか自分の裏山の名前に竜が付いているとは全く想像していなかった。








せっかくなので竜山に向かう自分の姿を絵に起こしてみたんだけれど、さてさて、無事に『竜退治』は終るんでしょうか? でもその前に一旦、場所を変えて京都に出かけて来ます。京都担当♯1、いよいよ始まりです。今回は探訪する前から「きっと、怒濤の旅になるんだろうな。」って今から予感しています。



[了]



《 次回予告 》

蛇や鹿、蜂や蜈蚣といった害獣(虫)に迫られてつつ、絵画制作や古民家再生の件で紛争するPANKICHIは緊張状態が続いて神経が伸び切り始めていた。そこに来て今回、個展の下準備のために京都へと赴くことに。そこで、彼はとある村に迷い込んで謎の “妖精” と出会うことになる。道中、彼を襲うシ客が待ち受けていることも知らずに_ 彼は生きて帰ってくることが出来るのか?! 次回もワクワクをめぐる冒険を!!



次回「京都探訪♯1_ ワンダーランド・ビーストと芸術家の旅(仮)」_